成年後見制度を利用するメリットとデメリットとは? / 弁護士 佐藤英生

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成年後見制度を利用するメリットとデメリットとは?

成年後見制度とは、判断能力が低下した方を保護するための制度です。

成年後見制度には、法定後見と任意後見があります。

今回は、それぞれどのような仕組みで、どのようなメリットとデメリットがあるのかを確認していきましょう。

 

【この記事のポイント】

  • 法定後見の仕組みがわかる
  • 法定後見のメリットがわかる
  • 法定後見のデメリットがわかる

 

法定後見の仕組みを確認しよう

成年後見制度は、法定後見と任意後見の2つの制度で成り立っています。

まずは、法定後見について詳しく確認していきましょう

 

法定後見を利用するには家庭裁判所に申立てが必要となる

法定後見は、判断能力が低下したからといって、利用できるものではありません。

対象者のご家族や親族等が家庭裁判所に申立てを行い、審理を経て利用できる制度です。

法定後見には、判断能力がどれくらい低下しているかによって、以下の3つに分けられます。

 

■後見

後見とは、日常生活がほぼ送れないほど判断能力が低下している場合に利用することができます。

後見するひとのことを後見人、後見を受けるひとのことを被後見人と言います。

後見を利用できる具体的な例として、重度の認知症だったり、寝たきりでほぼ意識がないような状態だったりということが前提となります。

 

■保佐

保佐とは、日常生活には支障が無いものの、重要契約を結ぶといった法律行為を行うには、判断能力が低下している状態の場合に利用できます。

法律行為等のサポートを行うひとのことを保佐人、サポートを受けるひとのことを被保佐人と言います。

保佐を利用できる具体例としては、中程度の認知症の状態等が挙げられます。

 

■補助

補助とは、保佐よりももっと判断能力を有している状態で利用できる制度です。

サポート役を補助人、サポートを受けるひとを被補助人と言います。

補助の対象となる具体例として、軽度の認知症等を患った方が挙げられます。

 

後見人等に付与される権利

法定後見のサポート役である後見人等は(後見人・保佐人・補助人のことを指します)対象となる被後見人等の判断能力に応じて、同意権・取消権・代理権を付与されます。

まずは、以下の表をご確認ください

 

 

同意権

取消権

代理権

後見人

保佐人

〇(原則として民法13条1項の行為の範囲内)

△(原則として民法13条1項の行為の範囲内)

△(家庭裁判所が認めた行為のみ)

補助人

△(民法13条の1項の一部)

△(民法13条の1項の一部)

△(家庭裁判所が認めた行為のみ)

 

■同意権

同意権とは、保佐人と補助人付与される権利です。

同意権は、民法13条1項で定めている法律行為が対象です。

以下のような行為を行うには、保佐人の同意が必要となります。

 

①貸したお金や不動産等を返してもらったり、資産運用を行ったりすること

②借金をしたり、借金の保証人となったりする行為

③不動産の売買契約等、重要な財産に関する契約を行うこと

④訴訟を起こすこと

⑤贈与を行ったり、和解、仲裁等を行ったりすること

⑥相続放棄や遺産分割協議への参加等、相続に関すること

⑦贈与の申し込みの拒否や遺贈を放棄すると言った行為、債務が発生する贈与や遺贈を承認すること

⑧新築や改築、増築等の家の修繕に関する契約等を行うこと

⑨土地や建物、山林、動産等、法律で決められた期間を超えて貸し借りすること

⑩成年後見や未成年後見等の法定代理人となること

 

これらの行為を被保佐人が行うには、保佐人の同意が必要となります。

なお、被補助人については、家庭裁判所が審理で認めた行為に同意権が付与されます。

 

■取消権

取消権とは、被後見人等が後見人等に同意なく法律行為を行った場合に行使できる権利です。

後見人は、被後見人が行った法律行為を取り消すことができる強い権限を持っています。

保佐人は、被保佐人が同意必要な法律行為を断りなく行った場合、取り消しを行えます。

補助人は、被補助人が家庭裁判所から認められた同意を必要とする行為を無断で行った場合に、その法律行為を取り消すことが可能です。

 

■代理権

代理権とは、後見人等が本人を代理して、法律行為を行う権利を指します。

後見人については、日常生活以外に必要な財産管理や契約に関わるすべての代理権が与えられます。

保佐人、補助人は、家庭裁判所の審理で認められた行為に限った代理権が付与されることとなります。

 

法定後見のメリット

法定後見のメリットとして以下のようなメリットがあります。

 

  • 被後見人等の法律行為に制限をつけられる
  • 被後見人等の財産を管理できる

 

被後見人等の法律行為に制限をつけられる

法定後見を利用するメリットとして、対象者の判断能力の程度に応じて、法律行為に制限をつけられることです。

例えば、認知症を患って判断能力が低下すると、悪質業者と高額な商品を売りつけられ、契約を結んでしまうケースがあります。

このような場合でも、法定後見を結んでおけば、後見人等が契約を取り消すことができ、被後見人等が不利益を被ることを回避することができます。

 

被後見人等の財産を管理できる

法定後見を利用するメリットとして、被後見人等の財産管理を行うことが挙げられます。

判断能力が低下すると、本人の財産の保護を目的として、金融機関が口座凍結を行う場合があります。

口座が凍結してしまった場合、例え家族であっても、金融機関が預貯金の引き出し等の取引を断るケースは少なくありません。

しかし、法定後見を結んでおけば、後見人等が被後見人等に代わり、取引を行うことが可能です。

 

法定後見のデメリット

法定後見は、家族が認知症となった場合、とても有効な制度ですが、制約が多いものでもあります。

法定後見のデメリットは、次のようなものがあります。

 

  • 後見人等は家庭裁判所が選任する
  • 後見事務は複雑で難しい
  • 財産処分には制限がある
  • 判断能力が低下してからでないと利用できない

 

後見人等は家庭裁判所が選任する

法定後見の後見人等は家庭裁判所が審理を経て選任します。

したがって、必ずしも家族が後見人等に選任されるわけではないというデメリットがあります。

実際に裁判所が公表しているデータによると、後見人等は弁護士や司法書士、行政書士等の専門家が選任されることが多いです。

 

後見事務は複雑で難しい

後見人等に選任された場合、毎年1年間の収支や財産状況等を家庭裁判所に報告する義務を負います。

このような作業を後見事務と言います。

後見事務は一般の方にとって、非常に難しく、煩雑です。

また、家庭裁判所への報告に虚偽があったり、報告をしなかったりすると、後見人等の解任されてしまう恐れがあります。

 

財産管理には制限がある

法定後見の財産管理は、被後見人等本人の利益になることのみ、認められています。

被後見人等の子どもに事故や病気になり、サポートが必要だった場合でも、被後見人等の財産から、そのお金を捻出することは認められません。

加えて、法定後見には遺言書等の機能はなく、あくまで被後見人等の保護を目的とした制度なので、被後見人等の死後に発生する遺産についての指定はできません。

 

判断能力が低下してからでないと利用できない

法定後見は、被後見人等が元気なうちに申し立てることはできません。

判断能力の低下が認められ、医者から診断を貰って初めて利用することができます。

老後や認知症に備えて後見人を取り決めておきたいという方は、任意後見や家族信託等の制度を検討する必要があるでしょう。

 

成年後見制度を検討されている方は当事務所にご相談ください

今回は、成年後見制度の法定後見のメリットとデメリットについて解説していきました。

法定後見はすでに判断能力が低下した方にとっては、とても便利な制度ですが、判断能力が低下していないと利用できない制度でもあります。

神戸ブライト法律事務所では、法定後見を検討されている方はもちろん、認知症や老後に備え、対策をとりたい方のご相談を承っております。

ご相談者様のご意向に沿ったアドバイスや、認知症対策のプラン等を提案させていただきますので、弁護士への依頼を検討されている方は、ぜひ弁護士佐藤英生までご相談ください。

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弁護士紹介

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弁護士
佐藤 英生(さとう ひでき)
所属団体
兵庫県弁護士会
ごあいさつ

私は、弁護士登録後、交通事故や不動産関係(明渡紛争、建築紛争、境界紛争等)をはじめとする一般民事事件から家事事件(相続、離婚等)、債務整理、企業法務に至るまで多種多様な業務を行ってきました。


私たちを取り巻く法律や判例・裁判例等の法的な環境は日々変化しており、このような環境に適応できるよう知見を広げることに努めています。


これまで培ってきた経験や知見を活かし、迅速・的確・丁寧をモットーに、最善の問題解決へ向けてのお手伝いをさせていただければと思います。

略歴
昭和62年8月 兵庫県神戸市で出生
平成18年3月 兵庫県立星陵高等学校 卒業
平成21年3月 関西学院大学 法学部法律学科 早期卒業
平成24年3月 大阪大学法科大学院 卒業
平成24年9月 司法試験合格
平成24年11月 司法修習開始(66期)
平成25年12月 岡山弁護士会登録 弁護士法人菊池綜合法律事務所にて勤務弁護士として執務開始
平成30年6月 兵庫県弁護士会登録 神戸ブライト法律事務所 入所

事務所概要

名称 神戸ブライト法律事務所 弁護士 佐藤 英生
所属 兵庫県弁護士会
代表者 佐藤 英生
所在地 〒650-0037 兵庫県神戸市中央区明石町32番地明海ビル8F
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